1997年9月21日 日曜日 − 大学入学の準備

  • 木々の緑も色褪せて、朝夕はめっきり涼しくなった。庭には落ち葉も舞うようになって、花ミズキは赤い実を付け、葉も色づいてきた。娘の学校が始まってから既に一ヶ月、高校3年の1学期は大学入学の願書の準備で始まる。

    日本では、相変わらず大学入学の準備 = 入試の準備ということのようだけど、アメリカの大学は通常、SAT や ACT などの名前で知られている全国共通のテスト、高校の成績、課外・学外活動、先生の推薦状、願書の質問へのエッセイを含む答え、面接などの組み合わせで学生を選ぶ。願書の早期受け付けは高校の最終学年の11月が締め切りだから、新学期(9月)が始まるとすぐに準備を始めることになる。共通テストは年に数回あって、何度受けてもいい。記録に残るのはそれまでの最高点だけという仕組みだから、4年ある高校の2年目3年目に練習も兼ねて何回か受ける学生も多い。

    大学の方は、取りあえず、SATの成績と学生が記入した興味のある分野をもとに、可能性のある学生に学園案内を送ってくる。中には、「うちの学校では音楽と数学ができる学生を探しています。というのも、うちの学校では音楽とレコーディング・エンジニアの学位を統合した5年間のプログラムを提供しているからです。SATのデータベースを見る限り、音楽に興味があって数学ができるという学生は全米であなたも含めて2300人しかいません。」というような学園案内が送られてきたりする。

    学生の方は、共通テストと学校の成績が足切りになるから、学校の成績もおろそかにできないのはもとより、コミュニティ・サービスも含めて、課外・学外活動もおろそかにできない。高校生のプロフィールには必ずこれこれのコミュニティ・サービス(多くはボランテア活動)をしましたというようなことが書かれている。ちなみに、うちの娘は2年間小学校へ行ってフランス語を教えたのをコミュニティ・サービスに数えている。

    履修科目の方は、目指す学校や専門によって要求されるレベルが違ってくるけど、点数を上げるにはAP (advanced placement) クラスをたくさん取ることになる。普通のクラスは4点満点だけど、AP クラスは5点が最高で、しかも最後の全国一斉テストの成績が良ければ大学の単位としても認められる。娘の話しを聞いていると、AP クラスを教える先生は優秀で(博士号を持っている先生もいる)授業内容も面白いらしい。もっとも、いい成績を取るには分厚い教科書(アメリカの学校の教科書は日本のに比べると参考書のように分厚い)を読むだけでは足りず、克明なノートも取らなくてはついて行けないらしい。

    日本の学生は高校で勉強して大学で遊ぶのに比べて、アメリカの高校生は大した勉強はせず、本格的な勉強は大学へ入ってからするという話しを鵜呑みにしていたけど、娘や娘の友達を見ていると、それは神話に過ぎない。

    文芸春秋の9月号に立花隆が「知的亡国論」という記事を書いている。それによると、日本の大学は入試に3教科しか使わなくなったから、高校生は自分の受験科目の3教科だけしか勉強してこない。その結果いまや日本人の教養の最大公約数は中学レベルになってしまったという。なるほど、それでは新聞や雑誌の質が低下するのも無理はないと納得した。

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