1997年5月4日 日曜日 − たまごっちアメリカ上陸

  • Available May 1stということで、アメリカのマスコミはなぜか「たまごっち」を大々的に取り上げた。日本で爆発的な人気が出たかららしい。たまごっちと似たようなコンセプトのCreatureとかいうゲームを出しているイギリスの会社は、商魂たくましくこれに便乗して、ナショナル・パブリック・ラジオに押しかけ、Virtual Creatureは概念的には実際の動物と少しも変わらないというような「深遠な」議論を展開していた。

    アメリカではPE magicがコンピュータ・ペットとしてDogzとCatzを出している。これはスクリーン・セイバーの働きもする。夫のオフィスの事務員は猫が好きで、オフィスのコンピュータ上で猫を飼っているが、私はただでさえ混雑しているデスクトップにペットを入れるというアイデアには馴染めないでいる。

    ナショナル・パブリック・ラジオで取り上げる以上、このようなゲームが子どもの教育・発達にどのような影響を与えるかといった深遠な議論を避けて通れないらしく、ちゃんと世話をしなければ死んでしまうというような結末に幼い子どもをさらすのは、むごいとかで、アメリカで販売されるバージョンでは、死ぬ代わりに、エンジェルになって天国へ行くというようになっているという話もしていた。アメリカ人の「恐い現実は見ない、見せない、考えない」の否定主義(心理的な防衛手段の1つでdenialという)にも困ったものである。

    これと対になっているのが、架空の現実作りに国を挙げてのめり込むというメンタリティーである。クリスマスになると、子どもがサンタは実在しないということを既に知っているかどうかで親は悩み、子どもはサンタを信じる振りをしてゲームが続く。最近はこれを正面から取り上げるマスコミも出てきているようだけど、大多数は子どもに悟られないように、婉曲な表現しか使わない。なにせ、子どもがサンタ宛てに書いて投函した手紙を、実際に配達したように見せかけるということをやってのける国である。

    サンタくらいならまだ笑って済ませられるけど、新約聖書も旧約聖書もすべて史実で、科学とも矛盾しないというようなことを、大きな全国組織のキリスト教団(fundamentalistと呼ばれる)が主張したり、彗星に陰に隠れてUFOが地球に接近しているから、魂を肉体から開放して、そのUFOに飛び乗るという「目的」で集団自殺したり、夫や手を切った愛人/夫による殺害が女性の死因の上位を占めるという事実を社会も警察も気づかない振りをするという背景にも同じメンタリティーがあると思うと笑って済ませるわけにはいかない。

    ビル・モイヤーのインタビューに答えて、あるfundamentalistグループのリーダーが臆面もなく「聖書に解釈の余地があるということにしたら、収拾が付かなくなる」といったような答えをするのを数年前にテレビのドキュメンタリーで見たことがある。そんな話は何百年も前に宗教革命で片が付いていたと思っていたけど、アメリカでは必ずしもそうではないらしい。

    fundamentalistは政治的に活発で、マスコミが良く取り上げるから目立つけれども、数から行けば少数派である。アメリカ人の大多数はジョーゼフ・キャンベルの宗教の位置づけを20世紀後半のアメリカの良識とみなすと私は信じたい。

    ビル・モイヤーといえば最近はアメリカ社会に鋭いメスを入れる番組を作っていない。パブリック・テレビが右派からの民営化するという脅しに怖じ気づいて、自主規制しているということでなければいいけど。。。

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