ネットサーフ日誌:平成8年2月


1996年2月21日 水曜日
  • 今日は気温が上がって午後には窓を開ける陽気。

  • 最近読んだ本の話しを少し。共和党はクリントン大統領夫妻に汚名を着せるのに躍起になっていろいろ工作してきた。それである事ないことほじくり返して裁判だ、喚問だと呼び出しを掛けてくるから、それを処理する弁護士に払う費用だけで大統領夫妻は既に破産寸前といううわさ。ヒラリー・クリントンはアメリカの弁護士トップ100人(基準は何なのか聞かなかった)に入るのだそうで、弁護士としての稼ぎで貯えたお金が2百万ドルほどあったのだそうだけど、それも底を付いて来たという話し。

    それでかどうかは知らないけど、ヒラリーが最近本を出した。"It Takes a Village and Other Lessons Children Teach Us"という題の20ドルのその本をわずかだけど寄付金代りにと思って買って読んだ。現代社会で子供たちを取り巻く問題とその解決のための政策を分かりやすく解説した本。半分は自伝風で、自分の生い立ちや子供のための弁護士兼政策立案者としての、さらにはファースト・レディーとしての体験談が織り込まれている。

    やさしく書いてあるけど、その背景には明晰な頭脳とやり手弁護士の説得力がある。ごく普通の家庭に育って、ごく普通に子育てしながら仕事を続けてきたこの人に共感できない人がいるとすれば、彼女の成功にやっかみや嫉妬を感じ、その頭の良さに脅威を感じている人たちであろう。共和党の連中が寄ってたかってこの人を袋叩き同然にしようとしいるのはこの人の能力を恐れているからに違いないと私は思っている。

    それにしても、私が一番あきれたのは、大統領一家が初めて訪日したときに、CNNニュースで日本から送られてきた若い日本女性の言葉。大統領夫人をどう思うかという質問に、「女のくせにでしゃばったことをしていて、いい感じしない」といったような内容の答えを聞いたときには、しばらく開いた口がふさがらなかった。ヒラリーが5万といるアメリカの弁護士の中でトップ100人に数えられるということも、その政策立案・調整の能力が非常に高く評価されているということもまったく知らなかったのだろうけど。。。

    ちょっと話しが横道にそれるけど、共和党の大統領予備選に立候補していたフィル・グラムの奥さんは朝鮮人で、レーガン大統領時代に商品取引市場のディレクターを勤めた経験を持つとかいう経済学博士である。フィル・グラムの横にいつも見え隠れしている東洋人女性が奥さんだと分かったとき、表立っていろいろ言う人はいないだろうけど、政治家としてはプラスにはならないだろうなと思った。

    ところが、予備選で奥さんが東洋人であることを攻撃の種にして、チラシに書いて配った人達がいたというのである。これを人種差別の問題として大きく取り上げたのは他の共和党予備選候補者ではなく、クリントン大統領だった。メディアでは非白人グループ向けの点数稼ぎだと、いつもながらのシニカルな分析だったけど、クリントンの言動を全て政治家としての点数稼ぎの駆け引きや戦略として捉えることしかしない政治評論家にも困ったものである。

    共和党も政治評論家も、クリントンは骨なしだとか信念がないとかはやし立てて楽しんでいたようだけど、私に言わせれば、連中は自分の内面を投影することで人を理解した気になっている哀れな日和見主義者なのである。クリントン「夫妻」は頭脳と信念と情熱と高い理想を持った、アメリカ広しといえども滅多に出ない偉大な大統領なのである。


  • ホームページへ|日誌インデックスへ|お便りは eueda@hiwaay.net上田悦子