ネットサーフ日誌:平成8年12月


1996年12月11日 水曜日
  • アメリカでは更年期障害というとすぐにHot Flashesという言葉が出てくる。更年期障害=Hot Flashesという感じだ。自分がその年になるまであまり注意を払わなかったのだが、自分で体験して(更年期障害としてではなく、子宮筋腫の治療にエストロジェン・ブロッカーを試したとき)、その名前の由来を納得した次第。1日に何度か足の先から頭の先まで文字どおり熱が押し寄せてくる感じでカーっと熱くなるのである。ただ、どう考えても日本でそれに相当する言葉を聞いた覚えがない。母がそのような症状を訴えるのを聞いた覚えもない。更年期障害というとどこか捕らえどころのない、いわゆる「不定愁訴」を真っ先に連想する。

    そう思っていたところへ、Tofu may cool off hot flashesという見出しの記事が新聞に載ているのが目に留まった。それによると、ノースキャロライナで大豆蛋白のhot flashesや寝汗に及ぼす影響を調べる実験をした医者がいて、1日20gの粉末大豆蛋白を摂取したグループではhot flashesや寝汗の症状が軽減するという結果を見たという話。イギリスでも似たような研究があって、そっちではhot flashesの回数が減ったという。

    その原因は、女性ホルモンの植物版ともいうべき物質phytoestrogenが大豆蛋白に含まれているからという結論。化学的にも人体の中でphytoestrogenがエストロジェンと同じように振る舞う事が分かっているとのこと。ただしその効果は本物の1000分の1だとか。

    大豆蛋白に着目するようになった理由の1つは、大豆製品を沢山食べるアジア諸国ではそのような更年期障害の症状がまれだからだとも書いてあった。さらに、日本人は1日平均50gの大豆蛋白を摂取し、日本語にはhot flashesという英語に相当する言葉もないとある。豆腐、油揚げ、納豆、味噌などいろいろ大豆製品があるとはいえ、更年期障害の症状を完全に押さえる事ができるほど毎日大豆製品を食べている人がそう沢山いるとも思えなかったら、更年期障害の記述を探してみることにした。

    日本のWebページを検索したら、四国の医師会で出しているらしい「生活医学シリーズNo.5 更年期障害」というページが見つかった。その中で更年期障害の症状の1つ目に熱感(ほてり)というのが挙げてあった。ちなみに、更年期障害の症状の記述を引用させてもらうと、

    次のような自律神経失調症が中心になります。熱感(ほてり)・冷え性・のぼせなどの血管運動神経障害、腰痛・肩こり・しびれ感などの知覚運動神経障害、吐き気・便秘・食欲不振・のどの渇きなどの消化器系の障害などがそれです。それに頭痛・めまい・いらいら・ゆううつなどの精神神経障害が加わるのが普通です。このほか、病変がないのに外陰部がかゆくなったり、尿がきれいなのに頻尿・残尿感などに悩まされるといった局所症状を訴える人もあります。

    熱感にしても、ほてりにしても更年期障害の症状だけに適用される言葉ではないから、Hot flasheに相当する日本語がないというのもあながち間違いとはいえないけど、症状の第1番目にあげられるということは頻繁に見られる症状ということなのでは。もっとも、それを表す特別の言葉がないということは、特別強い印象を与える現象ではないということにもなる。それにしても、この症状のリストなら、更年期の女性が体調を崩したら、全て更年期障害のせいにされそうだ。

    今は更年期障害の治療にエストロジェンを使うのが普通になっているけど、これを大豆蛋白で完全に代用できるのかどうかは、まだ分かっていないらしい。何せ、エストロジェンの効能書を読むと不老長寿の妙薬があるとすれば、これだと思われるような内容だから(これについては別の機会に書くことにする)、大豆蛋白が同様の効果を持っているということになれば、大豆市場が活気付くこと間違いなしである。


  • ホームページへ|日誌インデックスへ|お便りは eueda@hiwaay.net上田悦子