ホルモン補充療法: Dos と Don'ts
ホルモン補充療法: Dos と Don'ts
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「天然ホルモン:医者が無知な理由」セクションで説明したように、大多数の医者はいまだに製薬会社が提供する非常に偏ったガイドラインに従ってホルモン療法を行っています(Premproの製薬会社に対する訴訟を扱っている弁護士のWebサイト
参照)。安全で効果的な天然ホルモン(人体で分泌されるものと同じ化学構造を持つホルモン。そうでないホルモンは擬似ホルモン)の使用方法については皆目見当が付かず、旧来の処方を踏襲して、天然ホルモンでも間違った処方をする医者が後を絶ちません。
安全で効果的な更年期のホルモン補充方法を臨床実験データと科学的な知見に基づいて
dos と
don'ts
に分けて説明します。更年期障害の臨床実験データは表にまとめました。
Dos:
1.
人体同一の天然ホルモンを最低限必要な量、経皮投与
(クリーム/軟膏*、パッチ/張り薬、スプレイ、オイル、膣座薬・リング**):量が多いほど出血が起きやすくなるばかりでなく、ホルモンバランスが崩れて健康を害する元になります。不快/危険な副作用も出てきます。閉経数年以内で卵巣がある人の3人に1人は、クリームによる経皮投与で、プロゲステロン(黄体ホルモン)1日20mg
のみで、つまりエストロゲンの補充なしで、ホットフラッシュ(ほてり)や発汗を完全に抑えることができるという実験例があります。その場合、エストロゲンの補充は必要ありません(下表参照)。それで十分効果がなければ、1日0.025mgの経皮エストラジオール+
プロゲステロンでほとんどの人が症状を抑えることができます。それで足りない場合は1日0.05mgの経皮エストラジオール+
プロゲステロンで十分です[1]。子宮内膜の保護という観点から見ると、膣座薬を使用した実験では1日10mgのプロゲステロンが1日0.160mgのエストラジオールで刺激された子宮内膜を保護します。プロゲステロンの投与量の目安として、通常の月周期では最高1日30mgしか分泌されないことを頭に入れておく必要があります。
*要注意:
プロゲステロン・クリームが効率よく吸収され、酸化されないようにするには、リポゾームやビタミンEなどの適切な媒体内に浮遊させておく必要があります。ざらついたり水っぽくなったりしているクリームは効力がありません。上質のクリームでも封を切ってから3ヶ月ほど経つと水っぽくなって酸化が進んでいることがわかります。効率よく吸収されるためには、柔らかい清潔な肌に良くすり込む必要があります。ミネラルオイル(鉱油)は吸収を妨げるので、それを成分に含む製品との併用は避ける必要があります。全身に回る前に肝臓で処理されてしまうことを避けるために、肝臓に近い腹部への適用は避けます。
**要注意:
リング形式の膣座薬は摩擦による組織の炎症を誘発する可能性があるので頻繁にチェックする必要があります。
2.
プロゲステロン補充は生理の変化や異常その他の生殖機能の衰えが最初に現れた時点で開始する。生殖機能の衰えはプロゲステロンの不足という形で35歳くらいから顕著になってきますが、20代でもまれではありません。症状はPMS、生理痛、重い生理、卵巣のう腫、乳房の張り、その他個人差がありますが、45歳前後では、無視できない症状が増え、閉経が近いことを知らされます。プロゲステロンの低下は閉経の何年も前から進行する一方、エストロゲンのレベルは閉経の直前まで低下せず、FSH(卵胞刺激ホルモン)の上昇で卵巣が過剰に刺激されるため反対に高くなります[2]。35歳から閉経までが女性の健康にとって最も危険の多い期間になっているのは、このホルモンバランスの異常な崩れに由来しています。閉経後でも数年間は子宮内膜の増殖を刺激するのに十分な量のエストロゲンの生成が続き[3]、子宮ガンその他のエストロゲン優勢の弊害を避けるためにもプロゲステロン補充が重要になります。
3.
閉経後にエストロゲンとプロゲステロンを併用する場合は、エストロゲンのみの期間を入れない。以前は閉経後でも子宮を保護するには高レベルのホルモンで閉経前のホルモン周期を再現して生理を誘発する必要があると考えられていましたが、そのアプローチに根拠のないことは証明済みです(D
L Moyer et al. 1993[4])。両方を平行投与した場合、低量のプロゲステロン
(膣座薬では1日10 mg、経皮クリームでは1日20
mg) が、生理を誘発せずに、低~中量(エストラジオールの貼り薬で1日0.025~0.050mg)のエストロゲン補充によって刺激された子宮内膜を保護することが実証されています(下表を参照)。ただし、平行投与を開始した当初は軽い出血が見られることがあります。エストロゲンのみの期間を入れないことは卵巣癌の予防にも重要であることが知られいます[5]。
4.
定期健診を怠らない。健全なホルモンバランスを正しい方法で維持することによってさまざまなリスクを低減できますが、リスクが完全になくなるわけではありません。
Don'ts:
1.
エストロゲンの単独使用を正当化できる条件はありません。子宮がない人でもエストロゲンは必ずプロゲステロンと併せて使用する必要があります。エストロゲンの単独使用は子宮癌のリスクを高くするだけでなく、乳癌[6]、卵巣癌[7]
[8]、脳溢血[9]、痴呆[10]、その他のさまざまなエストロゲン優勢症候群のリスクを高くします。擬似ホルモンではこれらのリスクを低減できません。逆に高くなります。この事実を無視する人は、本物のホルモンと擬似ホルモンの違いを理解していないばかりでなく、エストロゲン優勢症候群の恐ろしさをっまったく理解していない人です。
2.
擬似ホルモンの使用を正当化できる条件はありません。擬似ホルモンが乳癌[11]、血栓[12]、高脂血症[13]などのリスクを高くすることは良く知られています。本物の黄体ホルモンの薬名は「プロゲステロン」、本物の経皮エストロゲンの薬名は「エストラジオール」または「17ベータ・エストラジオール」です。それ以外は偽者です。ホルモン補充用のホルモン剤だけでなく、避妊薬に使用されているホルモンもすべて擬似ホルモンです。プレマリンのように馬の尿から抽出したホルモンもあります。
3.
ホルモンの経口投与
(錠剤やカプセル)
を正当化する条件はありません。コレステロール[14]、心血管疾患[15]、メタボリック疾患[16]のリスクを高くします。経口プロゲステロンは子宮内膜保護の効果が弱く[17]、エストロゲンもプロゲステロンも経口投与では肝臓と腎臓に負担がかかり[18]、胆嚢疾患のリスクを高くします[19]。プロゲステロンの経口投与は標準投与量が100mgと非常に高い上に代謝される率が高いため、プロゲステロンの沈静作用が疲労感や鬱様の症状になって現れます。エストロゲンとのバランスが取れていない場合は特に過剰投与の悪影響が顕著になります[20].。プロゲステロンとその代謝物は脳内の
GABAa
受容体を介して鎮静剤として作用します。適量なら気分が落ち着き、脳内が静かになりますが、過剰投与すると酔っ払ったときのように認知機能が低下し[21]、消化機能もスローダウンします。
4.
静脈血のホルモン検査でホルモン補充の効果を確認することはできません。子宮内膜の状態と血清のホルモン・レベルの対応関係を調べた研究
(Trévoux, et al. 1986[22],
Sojo-Aranda et al. 1988[23])
では、両者の間に相関関係がないことがわかっています。ホルモン補充の効果を調べた場合も同じです (Ficicioglu
et al. 2004[24],
Tavaniotou et al. 2000[25],
Friedler et al. 1999[26])。静脈から取った血液のホルモンレベルの検査は、血清でも赤血球でも、遊離活性状態のホルモンでも、不活性の結合型ホルモンでも、体内に十分な酸素が運ばれているかどうかの判断に静脈血の酸素レベルを調べるようなもので、体の各所にどれくらいホルモンが運ばれたかを知る手がかりにはなりません。唾液や毛細血管の血液を測るとそれぞれの組織に運ばれるホルモンのレベルを知ることができますが、いずれも経皮投与直後から半日間ほどの間に急激な上がり下がりを見せる[27]
[28]
[29]ので、それを補充レベルの指標として使うことには無理があります。症状が改善するかどうかが問題なわけですから、補充の効果を見るには症状を見るべきで、子宮内膜が保護されているかどうかは子宮の検査で確認しないと意味がありません。
表 1.プロゲステロンの経皮投与を閉経後の女性に適用した臨床実験(特に断らない限りプロゲステロンは天然=人体同一)
|
実験 |
規模と期間 |
エストロゲン |
プロゲステロン |
結果 |
|
Leonetti et al. 1999[30] |
43人(偽薬47人)
自然閉経から5年以内
1年間継続 |
なし
(複合ビタミン剤とカルシウム1200
mgを毎日) |
プロゲステロン・クリーム小匙1/4
(プロゲステロン20mgまたは0mg)を毎日 |
ほてり発汗などの改善解消:
30人中25人(83%)、偽薬では26人中5人(19%)、30人中の11人は完全解消
効果は1ヵ月後に最大限に達し、その後変化なし。
骨量変化なし
軽い出血:
8人 |
|
Leonetti et al. 2003[31] |
32
人、閉経後7.1
±6.2 年
28日(1周期) |
プレマリン(結合型の経口エストロゲン)
1日0.625mg
子宮内膜の増殖を刺激するためにプロゲステロン開始2週間前に開始 |
プロゲステロン・クリーム1000
mg経皮投与1日2回、濃度0%、1.5%(1日30mg)、4.0%(1日80mg)
体重に合わせて調整 |
内膜増殖スコア(EPS)
初期EPS=2
→
最終EPS=0
(30mgと80mgのグループ)、偽薬のグループでは変化なし
0=増殖なし
1=極わずか増殖
2=中程度の増殖
3=本格的な増殖
4=過剰増殖
プレマリンのみの2週間に3人に軽い出血、次の2週間に3人に軽い出血(2人は0%グループ、1人は1.5%グループ)
98%以上が実験を完了 |
|
Arvind Vashisht et al. 2005[32] |
41人(44人のうち3人未完)
48週間継続 |
1日1
mg
の経皮エストラジオールを毎日 |
1日40
mg のプロゲステロン経皮投与を毎日 |
24週目では48%が出血なしのまま、48週目では35%が出血なしのまま。全期間を通じて50%が出血なしまたは極軽い出血のみ。出血頻度は全期間を通じて変化なし。
32 %
が内膜の増殖または過剰増殖
|
|
Arvind Vashisht at al. 2005[33] |
同上 |
同上 |
同上 |
24週後と48週後に被験者が報告した更年期障害の程度をGreen
Climacteric Scaleで計ると、明確な改善が見られた。 |
|
D de Ziegler et al. 2000[34] |
67人
6ヶ月間 |
エストロゲン(不明)
多分、経皮エストラジオール1日
0.05mg |
プロゲステロン・ゲル膣座薬
(Crinone 4%= (45 mg)
週に2投与 |
67人のうち54人
(80.6%)
は全6ヶ月間出血なし。内膜の過剰増殖なし。 |
|
Cicinelli, Ettore et al. 2002[35] |
26人
I 年間 |
経皮エストラジオール1日0.05mg |
プロゲステロン・ゲル膣座薬
(Crinone 4%= (45 mg)
週に2投与 |
82%が出血なし。内膜萎縮24人
(92.3%)、脱落膜化2人 |
|
Hamada et at. 2003[36] |
20人
16
週間 |
4ヶ月間連続使用の膣座薬リングによるエストラジオール1日0.160
mg |
4ヶ月間連続使用の膣座薬リングによるプロゲステロン1日10mgまたは20mg
|
2週間で早くもほてりと寝汗がはっきり改善し、気分スコアが著しく改善。
全期間に渡って両投与量とも内膜の厚さ
< 3 mm
出血は20mgリングで多く見られた。6週目以降に出血は見られなかった。 |
|
Ben-Chetrit et al. 2005[37] |
29人
4~6ヶ月
11人が副作用のため途中で停止 |
同上 |
同上 |
更年期障害が軽減、改善は1ヵ月後に最高に達しその後変化なし
内膜肥厚の抑制
不快な出血パターンなし
子宮内膜肥厚6人(20%)
|
|
Suvanto-Luukkonen et al. 1998[38] |
15人
I 年間 |
経皮エストラジオール・ゲル1日1.5
mgを毎日
|
擬似プロゲステロン子宮挿入IUD、1日100
mgを毎日 |
12ヶ月間内膜の厚さに変化なし
(2.5 mm -> 2.4mm)、5人は内膜不活性または萎縮状態、10人で増殖。過剰増殖なし。 |
注意:
赤い文字は過剰な投与量、経口投与、擬似ホルモン、その他問題のある条件であり、避けるべきことを示します。人体同一ホルモンの補充方法に関する実験データのレビューと解説は、その分野の権威である David T. Zava 博士の論文(第1部、第2部)を参照してください 。
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Feddema P.; Chan K.; Taranto M.; Smith M.; Evans S. Salivary, but not
serum or urinary levels of progesterone are elevated after topical
application of progesterone cream to pre-and postmenopausal women.
Clinical Endocrinology, Volume 53, Number 5, November 2000 , pp. 615-620(6)
プロゲステロン・クリームを経皮投与すると、30
~
60
分以内に唾液検査で検出できるようになり、1
~
4
時間で鋭く上昇して最高値に達しその後低下する。
[28] E Cicinelli, S
Sabatelli, D Petruzzi, S Stragapede, M Lapenna, G Balzano [Transvaginal
absorption of an oleic solution of progesterone (Gestone) in fertile women]
Minerva Ginecol. 1995 Mar ;47 (3):99-102
オイルに溶かしたプロゲステロン 100 mg
を経皮投与。血液検査では
1 ~
4
時間後に最大値に達しその後急速に低下するが、24時間後もベースラインより高い。
[29] B Villanueva, R F
Casper, S S Yen. Intravaginal administration of
progesterone: enhanced
absorption
after estrogen treatment. Fertil Steril. 1981 Apr ;35 (4):433-7
エストロゲン投与の後プロゲステロンの吸収率が高くなることを示した実験。プロゲステロンのピーク・レベルはベースラインの
20 ~
40
倍。アブストラクトには膣に挿入したプロゲステロンの投与量が明記されていない。
[32] Arvind Vashisht,
Fred Wadsworth, Adam Carey, Beverley Carey, John Studd. Bleeding
profiles and effects on the endometrium for women using a novel combination
of transdermal oestradiol and natural progesterone cream as part of a
continuous combined hormone replacement regime. BJOG. 2005 Oct ;112
(10):1402-6
1日
1 mg
のエストラジオール経皮投与が使用された理由は?
これは通常必要な量の40倍に相当する。1日
40mg
の経皮プロゲステロンが内膜増殖を抑制し切れなかったのも不思議ではない。2000
年に同じChelsea
and Westminster Hospital, London, UK
で行われた経皮プロゲステロンの実験では血清ホルモンレベルから判断して十分吸収されなかったという結論を出していたが、今回は血清ホルモンレベルに頼っていいないだけ進歩したと言ってもいい。エストラジオール投与量については進歩がないのがいぶかしく思われるが、プロゲステロンクリームが役に立たないことを証明するためにわざと異常に高いエストラジオールを使用したのかと疑われても仕方がない量である。いずれにしても、これが同病院を訪れる更年期の女性に処方される通常の量だとしたら、大問題である。
[33] Arvind Vashisht,
Fred Wadsworth, Adam Carey, Beverley Carey, John Studd. A study to look
at hormonal absorption of progesterone cream used in conjunction with
transdermal estrogen. Gynecol Endocrinol. 2005 Aug ;21 (2):101-5
[34] D de Ziegler, R
Ferriani, L A Moraes, C Bulletti. Vaginal progesterone in menopause:
Crinone 4% in cyclical and constant combined regimens. Hum Reprod. 2000
Jun ;15 Suppl 1 :149-58
[35] Cicinelli et al.
Twice-weekly transdermal estradiol and vaginal progesterone as continuous
combined hormone replacement therapy in postmenopausal women: A 1-year
prospective study. American Journal of Obstetrics & Gynecology.
187(3):556-560, September 2002.
[36] A L Hamada, T
Maruo, T Samoto, S Yoshida, H Nash, I M Spitz, E Johansson. Estradiol/progesterone-releasing
vaginal rings for hormone replacement therapy in postmenopausal women.
Gynecol Endocrinol. 2003 Jun ;17 (3):247-54
経皮投与の局所効果で、この実験で使用された比較的高いレベルのエストロゲンによる内膜増殖作用を抑えるのに1日10
mgのプロゲステロンで十分であることが示された意義は大きい。ほてりや気分の改善はその効果が脳にまで及んでいることを示す。
[37] Avraham Ben-Chetrit,
Drorit Hochner-Celnikier, Tzina Lindenberg, David Zacut, Shlomo Shimonovitz,
Hadassa Gelber, Irving M Spitz. Vaginal ring delivering estradiol and
progesterone: a possible alternative to relieve climacteric symptoms.
Isr Med Assoc J. 2005 May ;7 (5):302-6.
膣に挿入したリングは表面が粗く周りの組織に炎症を引き起こし、28人のうち11人はそのために途中で使用を停止している。同じ製品を使用した日本での実験(Hamada
et at. 2003)のアブストラクトではそのような問題については触れられていないのがちょっと不思議。でもスキン・クリームで十分効果があると知ったら膣に異物を挿入ことを選ぶ人は少ないはず。
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